『  雪祭にて ― (4) ―  』

 

 

 

 

   ゆうらり ゆらゆら ・・・・

 

ピンクの 白の そして 真紅の薔薇が 優しい風に揺れている。

「 ・・・ 薔薇の海 って この情景なんだわ ・・・

 ああ この香に酔ってしまいそう・・・ 」

フランソワーズは 花壇の合い間をゆったりと歩いてゆく。

ほんのり立ちのぼるはずの芳香は 束となりふんわりと彼女を取り巻く。

「 すごい ・・・ 薔薇の花壇ってエミリさんは言っていたけれど

 ここは 栽培用の畑 みたい ・・・ 」

 

   コツコツ ・・・ コツコツ ・・・ 

 

しばらく進むと散歩用の小路の脇にベンチがあった。

 

 「 ああ ・・・ ここで少し休んでゆきましょう・・・

 ふう~~  薔薇の香に酔う なんて 現実にあるのねえ ・・・

 すご~~い贅沢だわ  ふう ~~~ 」

彼女は水色のドレスの裾を 足元に引き寄せ丁寧に整えた。

「 ステキなドレス・・・ これシルクだわ この飾りボタン・・・

 ホンモノのパール よねえ・・・・ 」

さっくり結いあげた髪にも 濃い青色の髪飾りが光る。

 「 ・・・ あら ?  こういうドレス、着たことがあるわ・・・?

 えっと・・・ こうやって裾をさばいて ・・・ 踊った? 

 

   カタン。  カカトの高い布張りの靴を脱ぎ捨てる。

 

 「 そう ・・・ よ  こんな風に気取って歩いて・・・

 センターを分けて上手 下手 に別れて・・・・ ワルツ!

 三拍子の音楽で 気取って踊った ・・・ わよね ?  」

 

   ゆるゆるくるり・・・ くるり くるり~~~

 

ちょっと裾を摘みあげ 彼女は軽く踊ってゆく。

 「 そうなのよ・・・ こうやって踊っていると 幕が開いて・・・

 わたし達は 先輩たちが踊る前に ・・・ オーロラ姫さまの

 お誕生日祝いで ・・・・ わたし達女子の若手は 客人の貴婦人。

 男子は ラッパ卒 やら 小姓 ・・・ でも 皆張り切っていたの。

 きれいなお衣装も嬉しかったし~~

 ああ でも コールドでもいいからポアントで 踊りたかったな・・・

 

      え???  わたし  なにを 言ってるの???

 

 ・・・あらら? 脚が 足が ウキウキしてる・・・?

 

   とんとん くるり~~  自然に身体が動く。

 

 「 ・・・だってどうして わたし、こんなステップ 知ってるの?

 ねえ ― わたし ・・・ わたし って  誰?? 」

 

すとん。  彼女は崩れ落ちるみたいにベンチに腰を下ろした。

 

「 ここは  ―  どこなの??

 わたし どうしてここにいるの??  

 婚約者が 迎えにくる・・・って 伯爵は言うけど

 ・・・ それ だれ ・・・ ? 」

むせかえるような花の香の中で 彼女は急に冷え冷えとした想いに

身を震わす。

 

「 ・・・ お前が 外からきた娘 か 

 

不意に年老いた声が 降ってきた。

「 ! ・・・??  あの  ―  どなた ですか 」

顔を上げた先には 年老いた男性が佇んでいた。

「 ・・・ あの ・・・? 

「 ふん ・・・ なかなか美しい娘だ・・・

 この城に 相応しいかもしれん 」

「 ・・・・ 

「 白い悪魔の爪痕は すっかり消えたようじゃな 」

「 ・・!  あ ・・・ あのう もしかして ドクトル ですか? 」

老人は 彼女に問いに、ふ・・・っと視線を逸らす。

「 今は そんな風に呼ばれているがな 」

「 吹雪に凍えていた時 助けていただきました。

 ありがとうございます。 」

「 ワシはなにもしていない。 お前の心を縛っていたモノを解いただけだ。

 その身体は 自ら治癒できる 」

「 え?? わたしが ですか 」

「 そうじゃ。  不思議な身体を持つ娘よ ・・・

 熱い血潮の通う部分と冷えた鉄のカタマリが共存している 」

「 ・・・ ・・・・ 

「 お前もおそらく年をとらないのであろう・・・  

 ここに住まうもの達と同じじゃ。

 彼らの一族になれば 薔薇を食べ 薔薇を吸い 生きてゆく 」

「 ???  な んのことですか 」

「 ふん ・・・ ワシにもわからん。

 ただワシは ずっと昔から ずうっと以前から見守ってきた。

 地下にある永遠の炎と共に な 」

「 永遠の  炎 ・・・? 」

老人は白髪をふるわせ彼女のすぐ側に寄ってきた。

「 美しい  が。 」

皺の深い枯れた指が 彼女の白い頬にそっと触れた。

「 これは。    ヒトとは ちがう生き物 か。 」

「 え ・・・? 」

「 望みとあれば 一緒に連れていってもよい。

 まあ よく考えることじゃ。 」

 

    パキン。   かさり。

 

老人は薔薇を一輪 折りとるとフランソワーズの結い髪に挿した。

「 ・・・ この城に相応しい娘じゃ ・・・ 」

「 ・・・ 」

 

  コツコツ  コツ ・・・ 

 

彼はゆっくりと花園の奥に去って行った。

 

「 ・・・・・ 」

フランソワーズは じっとその後ろ姿を見ていた。

 

     なんなの ・・・・ このヒト

     ヒトとは違うって どういうこと?

 

     ・・・ ああ  ここは。

     とても居心地はいいけれど

     わからないことばかり ・・・

 

  ぶう ----  ん ・・・ ぶう ----- ん ・・・

 

また あの低い、ごく低い音が 微かに彼女の耳元に聞こえ始めた。

いや 常時聞こえていることに 気がついた。

 

     ああ ・・・ !

     ・・・ うるさい ・・・

     

その蜜蜂の羽音みたいな音は 彼女の心を揺さぶるのだ。

 

 

「 おねえさま~~~~   ここにいらしたのぉ~~ 」

薔薇の間を 少女が駆けてくる。

「 ・・・ ああ エミリさん 」

「 ここ、おきにめしました?  いい香でしょう? 」

銀の髪に 碧の瞳、 頬をほんのり染めて ―  その息まで香しい少女。

彼女は ぽん、とフランソワーズに抱き付いた。

「 おねえさま! 」

「 あらあら ・・・ エミリさん 

「 あ  ステキなかみかざり~~~ とてもおにあいよ 」

「 ・・・ この薔薇? 」

「 そうよ。 ねえ おねえさま。  私たちといっしょに 

 ずっとくらしましょう 

「 ・・・ でも わたしは 

「 あ 知ってるわ~ 大事な方がいらっしゃるのでしょう? 」

少女は したり顔して頷いてみせる。

「 あら オマセさんね エミリさんったら 」

「 うふふ おとうさまがおっしゃっていましたもの。

 ねえ その方もごいっしょに  ここにいらして? 

 おねがい~~  そしてエミリのおねえさまになって 

 ドクトルが そうしなさい とおっしゃれば・・・

「 エミリさん 」

「 あのね おねえさま。 

 エミリも ・・・ そうやっておとうさま と おかあさまの

 ムスメになったの 」

「 え・・?  エミリさんは 伯爵さまのお嬢様でしょう? 」

「 いまは。  そして これからもずっと ・・・

 だから おねえさまも! ね! 」

「 伺ってもいいかしら。 エミリさんは いつ・・・ ここに

 いらしたの? 」

「 とても小さい頃よ。 そうして おとうさまとおかあさまが

 エミリを家族にしてくださったのですって。

 う~~ん  あんまりよく覚えていないわ ・・・ 」

「 そう  なの ・・・ 」

「 だから いまはこの城のむすめなのよ?

 ねえ ねえ おねえさま。 そのばら はどうして? 

「 これは ― 先ほど ドクトルが挿してくださったの 」

「 まあ! 

ぱん・・・ ! 手を叩き少女はぱあ~~~っと笑顔になった。

「 そうなの!  それなら大丈夫。

 ねえ こんどの新月の夜 ・・・ ここの方になるのよ。 」

「 新月の夜 ・・・ 」

「 雪祭り なんていうヒトもいるけど。

 この城の中では 雪は降らないわね 」

「 ・・・  ゆき まつり ・・・? 

 

「 そうです。 雪祭り に 我々は新しい人を迎えるのです。 」

 

二人の後ろから 穏やかだが強い声が聞こえてきた。

「 まあ  伯爵さま 」

「 わあ おとうさま~~~ 」

振り返れば アッシャア伯爵が笑みを湛えて立っていた。

フランソワーズは 慌てて腰を折って会釈をした。

「 失礼いたしました。 伯爵さま 」

「 いやいや。  さあ 雪祭りの準備をしましょう 」

「 わたしが参加してもよろしいのでしょうか 」

「 マドモアゼル。 貴女を この城に迎える < 雪祭り > です。

 貴女の大切な方も お招きします。 」

「 さきほど お嬢様から伺いました。

 ここの住人の方々は 皆 外 から迎えられたのですか 」

「 いずれ詳しくお話しますが。

 この広い広い城は 代々アッシャア家が護ってきました。

 そして 来て欲しい と思うヒトを 外から迎えます。 」

「 ・・・ 来てほしい ・・・? 」

「 そうです。  私の妻もそうなのです。

 私はずっと彼女を見つめていました・・・

 私は彼女、セーラを愛した、伯爵夫人になって欲しかった。 

 それで その年の雪祭りに 」

「 わたくしは 雪祭りに招かれ ― この城のヒトになりましたの。 」

優しい声が 伯爵の言葉を継いだ。

「 ・・ そうだね、セーラ 

「 ええ  あなた 」

「 ああ 伯爵夫人 」

藤色のガウンを優美に纏った 伯爵夫人が立っていた。

「 わたくしも 外の世界から  こちらに招かれました。

 わたくしは ずっと・・・ 主人を見つめて生きてまいりました。

 だから 招かれた時 とても嬉しかった・・・

 それ以来 こうして幸せに暮らしておりますわ 」

「 おかあさま~~~ 」

少女は ぽん、と夫人に抱き付いた。

「 この娘、エミリエンヌも ―  わたくし達が招きました。

 可愛い娘に恵まれて本当に幸せですわ 

「 おかあさま  エミリもよ!エミリはおとうさま と おかあさま の

 ところに来たかったの!  だから 来たの! 

「 ・・・ でも わたしは ・・・

 自分自身のことも よくわからないのです ・・・ 」

「 マドモアゼル。  雪祭りの日に全て解決します。

 ねえ あなた? 」

伯爵夫人は 令嬢を抱きつつ夫君に暖かい眼差しを向ける。

「 ああ その通りだ。 」

伯爵は深くうなずき 皆を見回した。

 

「 ―  城門を開く。  雪祭りだ。

 さあ  あの若者を呼び入れよう。 」

「 かしこまりました。 手厚く御もてなしいたしますわ 」

「 頼む。  出来れば ― 連れてゆきたい 

「 はい。 わたくしも。 

 マドモアゼル?  さあ お支度なさい。 」

夫人は満面の笑みをフランソワーズに向けた。

「 ?? なんの支度ですか 」

「 大切な方をお迎えしますのよ?

 最高に美しいお姿をお見えしなければ ね 」

「 はい 

「 エミリ?  あなたの薔薇、マドモアゼルの髪飾りに

 ご用意してもいいかしら 」

「 おかあさま~~ エミリがお願いしようとおもっていたの!

 一番きれいなの、つんでくるわね! 

「 お願いね。  さあ 皆さん。

 雪祭りの用意を!  新しい住人を迎える準備を、

 そして 年に一度の祭を 楽しみましょう 」

伯爵夫人は 城に仕える人々にも告げるのだった。

 

   城壁の中には雪のカケラもないけれど 雪祭り は 目前だ。

 

 

 

           *************

 

 

 

 ガタガタガタ ----   ホテルの窓が揺れている。

 

建物全体は ヒーターが強力に効いているが ―  ロビーや廊下などの

隅には ・・・ ふ・・・っと蒼い冷えの影が淀む。

どんなに人工のチカラで温めても 空からひっきりなしに降り注ぐ

白い冬の使者にはとても敵わないのだ。

 

「 うわ  また荒れてきたなあ 」

ジョーは窓の外を確かめようとしたが こびりついた雪で外は見えない。

「 ・・・・ 」

ぶるり、と肩を震わせ 彼は窓辺を離れた。

「 お客さん。 そっち側は冷えるよう~  暖炉の側へどうぞ 」

ロビーの片隅で土産物を並べているおばちゃんが 声をかけてきた。

「 あ ども・・・ いやあ~ すごいですねえ~ 

「 ふふ~~ん  雪祭りの頃は 毎年こんな感じなんだよ 」

「 そうなんですかあ~   この雪の中でのカーニバルって

 すげ~~ですよね~~ 

「 ふふふ  この土地の皆でねえ 踊ったり騒いだりしてさ

 白い悪魔の気を逸らすのさ。 土地のモノを連れてゆくなってね 」

「 あのう・・・ さっきあのお爺さんに聞いたんですけどぉ

 昔は 雪祭りの頃って ― 誰かいなくなったって・・・

 ホントですか 」

ジョーは なかなか上手く話しをもってゆくので

土産モノ屋のオバチャンは 腰を下ろし喋り始めた。

「 あのジイサンがそう言ったかい?

 まあねえ ・・・ 最近じゃそんなコトはもうないけど 」

「 ・・・ でも 昔は・・・? 」

「 ・・・・ 」

アルベルトも 珈琲を飲む様子でこちらに聞き耳を立てているのが

よく見えた。

「 え~~~ 話してくださいよぅ~~ 

 都市伝説 っていうのかなあ   あ この人形 かわい~なあ~

 そだ! カノジョに買ってこっと 」

かなりヘタクソな芝居で ジョーは売店に散財した。

「 あれ まいど。  はい 彼女さんに魔除けだよ~ってね 

「 まよけ??? 

「 そう さ。  さっきの話だけど ・・・ 」

オバチャンも暖炉の側に寄ってきた。

 

   パチパチパチ ・・・ 燃え上がる炎は穏やかで温かい。

 

「 アタシの母親が子供の頃の話さ。 もうずいぶん前の ね・・・

 どこか外国の貴族様が旅行中の事故にあってね 馬車が谷に落ちたのさ。

 小さな令嬢だけが助かったんだ 」

「 そりゃ 悲劇ですねえ~~ 

「 うん なんでも外国の貴族様で 親戚とかに連絡する方法もわからなくて

 そのコは とりあえず地域の教会に預けられてね 」

「 ・・・ へ え ・・・ 」

ジョーのココロは チクリ と痛む。

「 いつまでたっても ―  迎えはこない、そのままで ね・・・

 いつも淋しそうに花壇の世話をして こっそり泣いていたんだと 」

「 ・・・ へえ ・・・ 」

「 秋になり冬になり 最後の薔薇も枯れて雪が降り出した日

 そのコは 消えたんだと 

「 え??? 」

「 最後の薔薇、枯れた花を握ったまま ・・・・

 白い悪魔が その冷たいマントに包んで連れていってしまったんだと 」

「 ・・・ へ え ・・・ それで その? 」

「 それっきり、さ。  冬の真っ盛りに ふ・・・っと誰かが居なくなる。

 居なくなっても誰も探さないってヒトが 消えるんだ。 」

「 え ・・・ 誰も さがさない・・・? 

「 そうなんだと。  そのうち ・・・ 毎年 一人 誰かが消える。

 吹雪が一番荒れ狂う日に ふ・・・っと居なくなる。 」

「 そ   それで ・・・? 」

「 そのうちに 雪祭り が始まったのさ。

 その日は皆で夜を通して踊ったり歌ったりして。

 誰も連れて行かれないようにしたんだと。

 今の雪祭りは その名残さ 」

「 へ え・・・ ふうん そうなんだあ~~ 」

「 ま 楽しんでいってくだされやあ

 雪ってもんは 甘くみたら恐ろしいけど こんなに美しいモンも

 ないからねえ~  」

「 そうですねえ ・・・ ぼく 都会っ子だから 」

「 ははは 気を付けてなあ~~ 白い魔物に連れてゆかれないように 」

「 え ~~ ぼくはオトコだしィ 」

「 関係ないよ。 アンタ オトコ前だからね~~ 気をおつけ。 」

「 え あ あははは・・・・・ 

ジョーは 微妙~に笑い暖炉の側を離れた。

 

「 ・・・ アルベルト? 」

ロビーの片隅、革張りに毛皮を敷いたソファで

アルベルトは なにやら分厚い書物を開いていた。

「 わ ・・・ すげ~~   それ 本? 」

「 ― ああ。 そこの隅の書架にあった。

 この地域の伝説だの言い伝えについて  だ 」

「 伝説? 」

「 そうだ。 あの売店のオバチャンのハナシは デタラメじゃない。

 ヒトが消える ってのは ずっとこの地域にあったのさ。 」

「 ヒトが 消える・・・ 」

「 ここにも 出てくるんだが。 」

彼は革手袋の指で 古い書物のページをめくる。

 

「 いいか 読むぞ ― その昔 ・・・ この地域は大貴族の領地で 

領主は 国王にも勝るほどのチカラを持っていた。 」

 

囁くみたいな小声だが ジョーにははっきりと聞こえる。

読み聞かせ に聞き入る子供みたいに ジョーは熱心に耳を傾ける。

 

「 冬になると雪に降り込められてしまい狩りにも行けないので

 舘で大舞踏会などを開催して楽しんでいた。

 ある年 国王の行幸があり 王は その夜会で 冬の神に仕える巫女の

 乙女に目を止めた。

 この地域では 冬を司る神を敬い崇める習慣があった。

 一番若くて一番綺麗一番上手に踊る娘が巫女となり 

 冬を支配する神に仕えていた。

 彼女が微笑み 彼女が舞えば 冬の神はその厳しさを緩めてくれるのだった。   

・・・ その娘が  突如消えた。

 彼女は 国王に所望され ―  逃れるために城の塔から吹雪の中に

 身を躍らせたのだ。 

 

「 ひええ・・・ それってなんか 酷いよね! 」

「 落ちつけ。 これは伝説だ。 」

「 ・・・ だけどさ~~ それって~~~ 」

「 続けるぞ。 

「 え 続きがあるんだ??  案外 めだたし めでたし・・とか? 」

「 黙って聞け。

 国王の部下がどんなに探しても 彼女の姿はなかった。

 地元の人々は 彼女は白い魔物が浚っていった としか言わない。

 いつしか 銀の髪の巫女、そんなモノはどこにもいなかった ・・・ 

 ということになった。

 それ以来 この地では冬も一番厳しい寒さの日

 < 居なくなっても 誰も探さない > モノが 消える と言われる

 ようになった。 」

 

  パタン。  アルベルトは 分厚い本を閉じた。

 

「 ・・・ なんか ぼくみたいだな 」

「 はあん? 」

「 知ってるよ。  聞いたんだ・・・

  BGはさ 浚っても誰も探さないモノ を選んで被検体にした って。 」

「 ジョー 」

「 ぼくは ― 消えても 誰も探さない ・・・ から 

 ぼくは いなくなっても誰も気付かない から。 」

「 お前なあ 」

「 だけどね!  フランは違うから。 

 ぼくが探す! 地の果てまで行っても何年かかっても。

 ぼくが 彼女を見つけだす。 」

「 ―  お前 胆が据わったな 」

 

  ぽん。  アルベルトは ジョーの肩を叩いた。

 

「 行こう。 彼女を探し出す。

 今 読んだのはただの伝説だ。 俺たちは現実を生きる。 」

「 そうだよね! 」

「 サイボーグとしてフル・パワーで 探そう! 」

「 うん!! 」

「 俺たちが組んだら ― 無敵だ。 」

「 うん! 」

 がっつん。   グー・タッチ。   ― 004 と 009 のタッチだ。

ジョーは に・・・っと笑った。

 

 

 

    ビュウ ~~~~~~~~  ・・・・・

 

雪は獰猛に吹き荒れる。

叩きつけてくるものが 本当にただの氷の結晶とはとても思えない。

 

「 ・・・ う~~~ ヘンだなあ・・・・・

 あの城壁を出たのは  確かにこの辺りなのに ・・・

 ・・・ 行けども 行けども ・・・ なにもないよう~ 

ジョーは 雪まみれというか 雪だるまが歩いているみたいになっている。

「 くっそ~~~ ねえ 防護服のほうがさあ  

 もうちょっとマシなんじゃないかなあ~~  うっぷ・・・・ 」

「 ダメだ。  あれは 目立ちすぎる。 ここには人目がある。 」

「 でも さ  ・・・ うわ~~っぷ  飛ばされる~~~~ 」

「 シッカリ踏みしめてあるけ。 お前 サイボーグだろうが。 」

「 そうなんだけどぉ~~  うっぷ  息がつまりそう~~

 ねえ やはりドルフィンに来てもらおうよ 」

「 ・・・ ・・・・ 」

「 ? アルベルト? 」

吹雪の中から 返事がない。

「 ねえ アルベルト? いるよね?? 」

「 しッ!  静かにするんだ ・・・

 なにか ・・・ とてつもなくデカイものが ・・・ 来る 

「 え?? 」

「 自分のレーダーをしっかり働かせろ!

 映っているはずだ ・・・・ 巨大な  なにか の影 ・・・ 」

「 ・・・・ あ! 」

サイボーグ達は 互いの距離を縮め固唾をのんで 前方に

注意を集中する。 

 

 ― ますます吹雪 が荒れ狂っている。     が。

 

 

       ゴゴゴゴ -----  ゴオン ---- !

 

 

 突如 目の前に巨大な城壁が現れた。

 

「 ! な  なんだっ??? 」

「 あ これだ これだよ アルベルト!!! 」

 

 

Last updated : 08.24.2021.           back     /     index     /    next

 

 

*********  またまた途中ですが

すみません~~~  またまた終わりませんでした (;´Д`)

おまけに短くて ・・・・   <m(__)m>

舞台は真冬の欧州ですが 現実は酷暑と疫病で

 ぼろぼろの首都です★  皆さま どうぞ ご無事で!